2022年5月20日 更新
発熱や呼吸器症状などで受診される患者さまへのお願い
- 発熱外来をご案内いたしますので、あらかじめお電話で予約をお願いします。
- 発熱がない場合でも、症状をお聞きして発熱外来へご案内することがあります。
- 来院されるときは、必ずマスクを着用してください。
- 予約時間より前に来院されないようお願いします(予約時間までは院外でお待ちいただきます)。
COVID-19
2022年5月20日 更新
月~金曜日の午前・午後の最後時間帯(11:30~12:15、17:00~17:45)で行っています。感染状況に応じて、発熱外来の時間帯を拡大するなど柔軟に対応しています。当院ではさいたま市保健所と契約し、必要と判断した方にはPCR検査等を行っています。
当院では検査体制を確立するため、2021年1月末から院内で測定できる全自動PCR機器を導入し、15分程度で結果が判明していましたが、2022年からはPCR検査キットの不足により院内のPCR検査が安定してできなくなりました。
早期治療に結びつけるためには迅速な診断が大切ですので、まずは迅速な抗原検査を主軸として行っています。症状のある方に行う抗原検査はPCR検査と比較してもほぼ同等の感度を示しますし、迅速抗原検査が陽性になればその場で確定診断となります。
必要に応じてPCR検査は外部に委託して行っていますが、結果は早くても翌日以降となります。
すべての患者さまにマスク着用をお願いしています。発熱患者と一般診療患者で待合室を分離して空間的な距離を保つようにしています。また、定期的な環境消毒・常時換気を行っています。
当院では個別接種に対応して接種を行なっています。接種券が届いた方は、さいたま市の予約システムからではなく、直接電話や窓口で予約を受け付けています。
重症化リスクのある患者に対して、内服の抗ウイルス薬が処方できるようになりました。2021年12月からメルクのラゲブリオ®が、2022年5月下旬からファイザーのパキロビッド®の2種類で、指定薬局で調剤が可能となります。ワクチン未接種者を対象とした研究で、重症化リスクをそれぞれ約30%、約90%低下させたと報告されています。いずれも特例承認された薬剤ですので、処方を希望される場合は同意書が必要です。
また、パキロビッド®では腎機能データと常用薬のデータが必要となりますので、最近の採血データ(Cr含む)とお薬手帳の持参をお願いしています。
新型コロナウイルスは、もともと風邪を引き起こすコロナウイルスの1種ですが、何らかの動物を介して変異したものが人に感染したと考えられています。
中東呼吸器症候群(MERS),重症急性呼吸器症候群(SARS)という感染症もコロナウイルスによるもので、それぞれヒトコブラクダ、ハクビシンから感染したことが知られています。
現在、ワクチンの普及により当初と比較して重症化率や死亡率は徐々に低下してきてはいるものの、新型コロナウイルス変異株の出現により世界的パンデミックは継続しています。
潜伏期は1~14日間です。暴露から発症までは平均5.2日で、ほとんどが12.5日以内に発症しています*1。
感染可能期間は発症2日前から発症後7~10日間程度と考えられています。ただし、人工呼吸器を必要とするような重症例では、感染可能期間は15~20日間と延長することがあります。
無症状の人からの感染伝播が40%以上を占めていることが分かってきました。特に、発症する数日前の感染力が強いため注意が必要です。
どのような状況にいるかで感染力は左右されますが、これまでの報告では1人の感染している人から2.2(1.4-3.9)人が感染すると言われています*1。しかし、変異株は感染力が強まり、デルタ株では7人、オミクロン株では10以上とも言われています*。
毎年冬に流行するインフルエンザが2-3人、麻疹(はしか)は12-18人であり、変異株では空気感染する麻疹と同等の注意が必要になります。
・主に飛沫感染:
インフルエンザと同じように、くしゃみや咳、つばなどに含まれたウイルスを、他者が口や鼻から吸い込んで感染します。1-2m以上の距離を超えて伝播することは稀です。
・エアロゾル感染:
飛沫よりも小さな粒子が、空気中を浮遊して感染を起こします。これは、換気の悪い密閉空間や、医療機関で行われる特殊な処置を行う時など、特定の状況でおこると考えられています。
・接触感染:
感染者がくしゃみや咳を手で押さえた後、その手で周りの物に触れるとウイルスが付きます。他者がその物を触って、ウイルスが付いた手で口や鼻を触っても感染します。接触感染による感染拡大は稀であると考えられています。
第5波はデルタ株が主体で感染が拡大しましたが、現在はオミクロン株の感染者が世界的に拡大傾向にあります。オミクロン株はこれまでの変異株と比較して最も感染力が強いと考えられます。以下はイギリスからの報告ですが、5症例目が報告されてからの日数とそれぞれの変異株感染者数のグラフです。ピンクがデルタ株、緑がオミクロン株であり、感染力の強さを物語っています。
オミクロン株はスパイク蛋白の変異箇所が多く、ワクチン効果が低下すると考えられます。2回のワクチン接種後20週を経過すると、アストラゼネカでは発症抑制効果はほとんどなくなり、mRNAワクチンでも10%にまで低下すると報告されています。
以上を考えると、今後日本でも感染が急速に拡大し、第6波となることは避けられないと思われます。しかし、これまでの報告では入院リスクはデルタ株に比較して1/3程度であり、重症化しにくい可能性が示されているのは朗報です。
UKHSA publication gateway number GOV-10869
熱とだるさ、乾いた咳が主な症状です*2。
のどの痛み、鼻水、下痢は、頻度は低いですが出ることもあります。
COVID-19症状 | 症状ありの人の割合(138人中) |
---|---|
発熱 | 98.6% |
倦怠感(だるさ) | 69.6% |
乾いた咳 | 59.4% |
咽頭痛(のどの痛み) | 17.4% |
下痢 | 10.1% |
上記報告は入院患者を対象としている報告のため、重症者の症状の頻度となります。
軽症の方がほとんどである、当院で経験した陽性者の症状は下表の通りでした。
頻度が高いと考えられていた発熱や咳ですが、50%程度の方にしか出現していませんでした。また、鼻汁・咽頭痛・下痢は30%程度の方に認められています。症状だけでは普通の「かぜ」と見分けがつかず、検査をしないで新型コロナウイルス感染症と診断することは極めて困難ということが分かります。比較的特徴的な所見としては味覚嗅覚障害ですが、症状を訴える人は30%程度でした。
感染した人の多くは、普通の風邪のような症状で、1週間ほどで自然に良くなります。
重症になる方は、はじめの症状がでてから1週間を経過しても、発熱が続き呼吸が苦しくなるなど、症状がだんだんと悪化してきます。
70歳以上の高齢者や基礎疾患(心血管障害、高血圧、糖尿病など)をもつ方が重症化しやすい傾向にあります*3。
新型コロナウイルス感染症診断の手引き第6.0版
現在、新型コロナウイルス感染症を診断するための検査は以下の通りです。
①PCR検査(リアルタイムPCR、LAMP法など)
②抗原検査(定性、定量)
PCR検査 | 抗原検査(定量) | 抗原検査(定性) | |||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
鼻咽頭 | 鼻腔 | 唾液 | 鼻咽頭 | 鼻腔 | 唾液 | 鼻咽頭 | 鼻腔 | 唾液 | |
発症 ≧9日 |
〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | ✕ |
発症 ≦10日 |
〇 | 〇 | - | 〇 | 〇 | - | △ | △ | ✕ |
無症状 | 〇 | - | 〇 | 〇 | - | 〇 | - | - | ✕ |
*当院ではPCR検査、抗原検査(定性)を行っています。
鼻咽頭(鼻の奥)で行うPCR検査が最も精度が高いといわれていますが、それでも検出率(感度)は70%程度です。「PCR陰性=感染していない」ではありませんので、感染流行期に発熱した場合は検査が陰性であっても、1週間程度の自宅療養を推奨しています(新型コロナウイルスの感染力は1週間程度で大幅に低下することが知られているため)。
また、PCR検査はウイルスの死骸にも陽性反応を示すため、「PCR陽性≠感染力がある」と考えられています。これまでの論文からも、軽症~中等症では7~10日間程度で感染力はなくなると報告されています。
抗体検査は保険適応されておらず、自費での検査となります(当院では8,000円)。
抗体検査の特徴は高い感度(発症1か月以降ではほぼ100%検出)ですが、発症初期の感度は低く診断目的には使用できません。主に、過去にかかったことがあるか、ワクチン接種で抗体が上昇しているか知る検査となりますが、感染して時間が経過すると抗体価が低下して陰性となる場合があることや、どのくらいの抗体価があれば感染予防効果があるかは分かっていません。
日本ではファイザー社・モデルナ社・アストラゼネカ社のワクチンが使用予定となっています。 ファイザー社とモデルナ社はmRNAワクチン、アストラゼネカ社はウイルスベクターワクチンです。mRNAワクチンは標的となるたんぱく質の設計図を直接投与して、体の中でその標的タンパク質を作ることで反応して免疫ができるようになります。ウイルスベクターワクチンは、無毒化したウイルスを運び屋(ベクター)にして標的となるたんぱく質の設計図を投与する方法です。
ファイザー社 | モデルナ社 | アストラゼネカ社 | |
---|---|---|---|
ワクチンタイプ | mRNA | mRNA | ウイルスベクター |
投与方法 | 筋肉注射 | 筋肉注射 | 筋肉注射 |
投与回数 | 2回(day0,21) | 2回(day0,28) | 2回(day0,28) |
保管温度 | -75℃(±15℃) | -20℃(±5℃) | 2-8℃ |
これまでの臨床試験で、発症予防効果はファイザー社、モデルナ社共に90%以上と報告されていました*4。しかしながら、ワクチン効果は時間の経過や変異株の出現により減弱し、ブレークスルー感染が問題となってきました。重症化予防効果は6ヶ月は維持されるという報告が多いですが、60歳以上では6ヶ月後以降で重症化率が上昇傾向にあるとの報告もあります。 そのため、3回目の追加接種により、発症予防効果・重症化予防効果を高めることが期待されます。イスラエルの研究では、60歳以上で追加接種を受けた場合では、追加接種を受けなかった場合と比較して、発症率が11.3分の1、重症率が19.5分の1であったと報告されています**。
3回目の追加接種はmRNAワクチンが世界的に推奨されています。mRNAワクチンにはファイザー社と武田/モデルナ社がありますが、交互接種(1、2回目と異なる種類のワクチン接種)の方が中和抗体の量が増加するというデータ(下表)があり、追加接種はmRNAワクチンであればどちらでも効果が期待できます。
1・2回目 | ファイザー | ファイザー | モデルナ | モデルナ |
3回目 (追加接種) |
モデルナ | ファイザー | ファイザー | モデルナ |
中和抗体(倍) | 17.3 | 14.9 | 9.7 | 7.9 |
イギリスの報告では、アストラゼネカ社ワクチンを2回接種した20週以降では発症予防効果はほとんど無くなってしまいます。mRNAワクチン(ファイザー社、武田/モデルナ社)でさえ、2回接種した20週以降で10%にまで低下します。
mRNAワクチンの追加接種(3回目接種)で、2-4週後のワクチン効果は65-75%へと回復しますが、5-9週後には55-70%、10週以降では40-50%と徐々に低下してしまいます。ファイザーを2回接種した方はモデルナを追加接種した方がワクチン効果の持続期間が高い可能性があります。追加接種を行なっても、残念ながら発症予防効果は時間と共に低下してしましますので、追加接種を行なっても基本的な感染対策の継続は必要です。
感染の封じ込めは難しいため、重症化予防効果に期待したいところであり今後の報告が待たれます。
UKHSA publication gateway number GOV-10920
(BNT162b2: ファイザー社、mRNA-1273: 武田/モデルナ社)
アナフィラキシー(重度なアレルギー反応)は、接種後短時間に発現することがほとんどですので、初めてのワクチンの場合には接種後15分程度は院内で待機をお願いしています。
アナフィラキシーは皮膚症状(湿疹、かゆみなど)、呼吸器症状(息苦しさなど)、循環器症状(血圧低下など)、消化器症状(嘔吐など)が強く現れる反応です。厚労省の報告では発症頻度は10万人あたり0.1-1.6人程度と報告されています。
注射後の痛みや腫れなどの軽い副作用は頻繁に現れますが、通常は数日以内に治ります。必要に応じて、解熱鎮痛剤(市販薬含む)を服用するなどで様子を見てください。
3回目の副反応は、2回目の接種時と概ね同様の傾向であると確認されています。ただし、初回接種と比較してリンパ節の腫れの発現傾向が高いことが報告されていますが、これは免疫反応の現れと考えられ、時間の経過と共に自然に治ります。
mRNAワクチンではごく稀に、特に10-20代の若年男性で心筋炎や心膜炎を疑う事例が報告されています。発症頻度としては武田/モデルナ社の方が高いことが確認されておりますので、ワクチン接種後4日間程度で胸の痛みや息切れなどの症状が現れた場合は医療機関へ受診してください。発症した場合の多くは軽症であることも報告されています。
なお、新型コロナウイルスに感染した場合にも、心筋炎・心膜炎の発症リスクは上昇し、その頻度はワクチン接種よりも高く、かつ、重症であるため、ワクチン接種を行うことは有効と考えられています。
毎日検温など健康状態を把握するように努めましょう。発熱などの風邪症状がある場合には、無理をせず休養することが、感染拡大防止には大切です。
規則正しい生活をして、免疫力を高めましょう。また、ワクチンを積極的に接種するようにしましょう。
「三密」(密集、密接、密閉)を避けましょう。集団感染は、「換気が悪く」、「人が密に集まって過ごすような空間」、「不特定多数の人が接触するおそれが高い場所」という共通点があります。
できるだけ、そのような場所に行くことを避けていただき、やむを得ない場合には、マスクをするとともに、換気をする、大声で話さない、相手と手が触れ合う距離での会話は避ける、といったことに心がけてください。
手洗いや咳エチケット(咳やくしゃみをする際、マスクやティッシュ、ハンカチ、袖、肘の内側などを使って、口や鼻をおさえること)をお願いします。